お話が過熱してしまい、外羽根の靴の話を怒涛の3連投。外羽根の靴のお話についてはまた別の機会にお話することにして…
本日のブログではモンクストラップシューズ、その中でもシングルモンクストラップの靴についてお話していきたいと思います。
シングルモンクストラップ
モンクストラップと呼ばれる革靴の歴史は非常に古く、その原型となると15世紀にまで遡ることができるといわれています。モンクストラップの起源はアルプス地方の修道士=モンクが履いていたサンダルとされています。そして、それを原型にした革靴がタウンシューズとして登場したのは1930年代になってからです。
そして、この写真のようなVフロントになっているシングルモンクストラップ(プレーントウタイプ)の靴がモンクストラップの基本であるといえます。
さて…お決まりの流れとなってしまいましたが(笑)、またまた紳士靴の総本山であるジョン・ロブ・ロンドンではモンクストラップの靴をどのように紹介しているのかを見てみましょう。
A popular shoe for informal wear. The one depicted is made of Russia Calf but, as Monk Shoes are designed above all for ease and comfort, Buckskin is often chosen. Furthermore, an easier fitting is given around the ankle with a shoe fastened by a single buckle, as in Monk, than in a lace-up shoe where a closer fit is desirable. Although the true Monk, with its pleasing simplicity of style, is a plain shoe, broguing can be carried out if desired.
毎度毎度なかなか刺激的な話です。
まず非公式な靴であるとして、シングルモンクは快適さを優先するために、バックスキン(鹿の銀面を起毛させたもの)で仕立てることがよくチョイスされるとされています。ジョン・ロブ・ロンドンにおいては、まったくフォーマルシューズとして捉えられていないようです。
そして、「真の」シングルモンクストラップはプレーントウであるとも言っています。
この点に関しては筆者もシングルモンクストラップの清楚な雰囲気を活かすという意味で概ね賛成です。
ブローグをモンクストラップに施すことについても言及しています。
This is a variant of the plain Monk shoe that has been used for informal wear for many years. Different styles of broguing may be carried out but the wing-cap is found to be particularly suited to the long-fronted Monk style. The shoe photographed is made of Crup or Cordovan leather, rich dark brown in colour, and has a thick crepe rubber sole. If a lighter-weight shoe is desired, microcellular rubber soling equally thick but not as heavy as crepe, can be substituted.
The shoe tree shown is specially hollowed for air-travel.
シングルモンクストラップでブローグを組み込むというと、多くの場合はフルブローグになるでしょう。
あまり取り上げられることもなく、日本市場でそう見かける靴ではありませんが、イギリス靴ブランドでは古くからみられる靴です。イタリアブランドのエンツォ・ボナフェでも出していますね。
ジョン・ロブ・ロンドンの長い歴史の中で、ノーズがある程度長く見えるように作るのがフルブローグのデザインとマッチすると一つの解が出ているようです。
あくまでサンプルはコードバンにクレープソールで底付けした、あくまでカジュアルなスタイルな雰囲気で仕立てたようです。
ここまで見ていると、ブローグタイプは置いておくとしても、ロブ・ロンドンとしてはシングルモンクストラップの靴がカジュアルなものとして捉えているようですね。
アメリカでフォーマルウェアとして発展
ここまではジョン・ロブ・ロンドンの見解です。世界中に数多の靴メーカーがあるといえど、ロイヤルワラントまで授かっている重鎮がいうことなので、「シングルモンクは非公式な靴である」という言葉に重みがありますが…。
しかしジョン・ロブ・ロンドンが言うことで世の中全てが回っているわけではありません。
1940年代のアメリカでは冠婚葬祭含め履いていけるという、フォーマルウェアとして発展した経緯があります。
MIYAGI KOGYO UME Ⅱ 60,500円(税込)
おそらくこの流れなのでしょうが、シングルモンクストラップシューズは紐靴以外においてフォーマルな場にも履ける靴として、メディアでは謳われるようになっていきました。
その人気はハリウッドスターにも広まっていたようで…
「ローマの休日」でも有名なアメリカの俳優、グレゴリー・ペック。
彼もしばしばシングルモンクストラップの靴を好んで履いていた様子が、いくつかの写真に残されています。
The Man in the Gray Flannel Suit(邦題:灰色の服を着た男)のスチール写真でも見れます。シンプルなスタイルにプレーンシングルモンクの靴が洒落感を引き立たせるアクセントとして引き立てていると感じます。
実にモダンで、今見ても色あせることがありません。
実際問題、結婚式やお葬式にシングルモンクの靴は履いていいのですか?
日本のフォーマルシーンの様々な環境を考えると、基本的にあまりよろしくないと思います。
これは筆者が日ごろお客様と接客し、お話をする中での実感です。
例えばドレスコードが厳しくないカジュアルな「結婚パーティー」に出席し、「ちょっと洒落感を出したい」というような、何か意図的なご希望等がない限りは、シングルモンクの靴を礼装用にあえてお勧めすることはありません。
やはり内羽根のストレートチップ、プレーントウのフォーマル感に勝る靴はないと思います。
特に参列者の立場であれば、その人がお洒落をするための場ではないわけですから、インパクトを残すための個を打ち出す靴ではなく、主催者を引き立たせるために、控えめなスタイルに徹することが本来のフォーマルスタイルであると考えます。
ちょっとした余談になりますが、つい先日テレビ東京の午後のロードショーで「007 ワールド・イズ・ノット・イナフ」が放映されていたので、外出自粛ということもあって、見ていたのですが、ボンドは葬式に参列するシーンでChurch’sのPresleyとシングルモンクの靴を履いていました。
じゃあやっぱりシングルモンクの靴はいいんじゃないか!?と思うわけですが、着ているスーツも、ツイードっぽい起毛感のあるオーバーペーンのスーツだったので、スーツも含めお葬式に参列するにはどうか?と疑問符をつけざるを得ませんでした。我々の実生活においてこのボンドのお葬式のスタイリングは参考にできないでしょう。
ワールドフットウェアギャラリーで歴史的ヒットのシングルモンクは…!?
さて、長いお話になりましたが、今ワールドフットウェアギャラリーでは歴史的に大ヒットしているシングルモンクの靴があります。
OrientalのJOSEPHです。
シングルモンクストラップの靴ではありますが、履き口が広く、スリッポンと同じ構造となっているため、ストラップを取らずにそのまま脱ぎ履きができるようになっています。
このタイプのシングルモンクストラップの靴は、イギリス靴では非常にポピュラーなスタイルで、最も代表的なChurch’sのWestburyを筆頭に、多くのメーカーで作られ続けてきた伝統的な靴になります。
スリッポン構造になっているのは履きやすさの面だけでなく、見た目にもその効果がでます。
ややカジュアルなニュアンスが出ますので、2020年の「オン・オフ兼用」が求められる今、ご要望になる方が後を絶ちません。
シングルモンクの靴をまだ履いたことがない、という方はまずこのOrientalのJOSEPHからワードローブに加えられてはいかがでしょうか。
スタッフ一押しのシングルモンクはこれ!
さらに、アメリカントラッドからの流れで行くと、お勧めのモデルはこちら!
2021年春夏の新作として加わったMIYAGI KOGYOのUME Ⅱです。
MIYAGI KOGYO UME Ⅱ 60,500円(税込)
フロントがVカットになっているこのスタイルこそ、アメリカでかつて人気を博したシングルモンクストラップシューズです。
OrientalのJOSEPHに比して、よりフォーマル度が高くなった靴です。小ぶりのバックルが嫌みのないアクセントになり、紐靴が持っていない華やかさを演出します。
パリッとした服装にも合わせたいという方、こちらのUME Ⅱはいかがでしょうか。