Bond, James Bond.
誇張をすることもなく自分の名前を紹介するだけのセリフで、ここまで世界中の人を魅了することがあるのでしょうか。
2020年は悲しいニュースが世界中を駆け巡りましたが、初代ジェームズ・ボンドのショーン・コネリーが亡くなったニュースにも世界は大きな悲しみをうけました。世の中には「ファッショニスタ」「ファッションインフルエンサー」と呼ばれる人は数多くいますが、「スタイルアイコン」として君臨し続ける人間は、両手に数えられるほどしかいないと思います。
現在6代目ジェームズ・ボンドとして、ボンドを演じるダニエル・クレイグは追悼コメントをこのように発表しています。
“映画界のまさに偉人の一人が亡くなり、悲嘆にくれています。 サー・ショーン・コネリーはボンドとしてだけでなく、それ以上の存在として、人々の記憶に残るでしょう。彼は、一つの時代とスタイルを定義したのです。スクリーンで演じたユーモアと魅力は言葉にできないほど素敵で、今日における大ヒット作品というものの礎を築きました。これからも長きにわたって多くの俳優や映画製作者に影響を与え続けるでしょう。私の想いは彼の家族と愛する人たちと共にあります。彼の辿り着く場所に、ゴルフコースがありますように”
ダニエル・クレイグが言うように、ショーン・コネリーは「一つの時代とスタイルを定義した」のです。そして今なおファッションと時代の枠をはるかに超越して、スタイルアイコンとして親しまれ続けています。彼が残した業績というのは、あまりに偉大なものであったと思います。
「007は二度死ぬ」とワールドフットウェアギャラリー銀座店
そんなショーン・コネリーですが、映画好きの方ならご存知かと思いますが、007シリーズの第5作目「007は二度死ぬ」は、日本が舞台となっています。
忍者が出てくる、おまけにボンドも特訓して忍者になる、手裏剣も使う、日本人の妻(浜美枝さんが演じてましたね)をめとる、という謎の日本観がさく裂した作品なのですが、それでも相変わらずカッコイイのがジェームズ・ボンド=ショーン・コネリーなのでした。
いよいよ本題です。彼が逝去したのち、彼が出演していた作品を見返していたのですが、ここで大きな発見をしました。
ロケ地は様々なのですが、日本に到着した当初、ボンドは銀座の街を歩いています。
ぜひ映画をご覧になって確かめてみてください。
一瞬映るツルヤ鼈甲店というのが…。
なんと今のワールドフットウェアギャラリー銀座店なんです!
構図的にはこんな感じでしょうか?
ツルヤ鼈甲店が閉店したところに1997年に出店したのです。
今なお、その名残はありまして…
旧ツルヤ銀座ビルの文字が。
そうです。ショーン・コネリーは銀座すずらん通りに来ていたんですね~。
ボンドに魅了された男(筆者)が、ボンドが目の前を歩いた店で働き、ボンドスタイルの薫風を受けながら靴に向き合う…。
なんとも人生の縁というのは奇妙なものです。
なお、この後ボンドは路地裏に入っていくのですが、この路地裏は今のMARIAGE FRERESさんの横に折れる細い入口です。
そして右側奥に「鳥ぎん」の看板がみえるシーンがあります。
これは今も残る「鳥ぎん」さんです。この路地裏の現在はこのようになっています。
この路地裏は銀座ながら、今もなんとなく昭和感の残る雰囲気ですね。
このあと美容室のドアに入っていくと、その先が「どこでもドア」のごとく、蔵前国技館に通じてしまうから驚きです(笑)
美容院さんはおそらくここにあったのだと思われます。
MIYAGI KOGYO AZAMI(薊)
さてさて、ジェームズ・ボンドときたら、その身にまとうアイテム1つ1つが男心をくすぐります。
ショーン・コネリーが演じた時に履いていた靴はジョン・ロブ・ロンドンでオーダーされたものであると言われていますが、詳細なことはわかっていません。
1作~5作、とんで7作を通して仔細にコネリーが履いている靴を観察すると、ポインテッドトウ、スクエアチゼルトウ、ラウンドトウ等で主にプレーン系の靴を色々履いていた様子です。
2アイレットか3アイレットで、プレーントウかストレートチップのダービー。
ショート丈のアンクルブーツ、プレーンスリッポンです。
ただし、靴というのは映像に写る角度によって、光の陰影が生まれ、形状が曖昧にみえます。特にプレーントウの靴は光の陰影が大きく影響するため、実際はどんな形の(特につま先が)靴だったのかは確実にはわかりません。
スーツのアンソニー・シンクレア、シャツのターンブル&アッサーのように、ジョン・ロブで注文している写真は確認出来る限りでは残っていないですし、謎は深まります。
しかし、それくらい謎があったほうがいいのかもしれません。全てがわかってしまっても、それはそれで夢がないですし、きっとこれくらいがちょうどいい塩梅なのです。
さて、ひとつ大きくわかっていることといえば、件の「007は二度死ぬ」では、エラスティック・オン・インステップシューズを履いているということです。
いわゆるセンターエラスティックシューズですね。
茄子紺で青みのあるモヘアのソリッドネイビースーツに、ブラックグレインレザーのプレーントウ・エラスティック・オン・インステップ!
なかなか真似ができない、激渋なコーディネートですが、グレインレザーでよりソフトな履き心地になるということと、脱ぎ履きが容易であるということでスパイにもうってつけ。
ジェームズ・ボンドが選ぶ靴としては最適なのかもしれません。
また、60年代というとプレーントウの各種エラスティックスリッポンが人気を博していたので、時代感ともマッチします。
エラスティック・オン・インステップはジョン・ロブ・ロンドンが得意としているスタイルのスリッポンです。やはりコネリーが履いたのはジョン・ロブ・ロンドンの誂えだったのかもしれません。
エラスティック・オン・インステップシューズは、いわゆるコインローファーやタッセルローファーと違い、ONモードの時に履くスリッポンです。ゆえにディナージャケットのようなフォーマルスタイルにもしっかり対応できる数少ないスリッポンシューズなのです。
あまり本腰を据えて展開しているブランドがとても少ないので、本格的なエラスティック・オン・インステップシューズは存在そのものが珍しいです。
さてさて、前置きがとても長くなりましたが、そんな珍しい靴を今回ワールドフットウェアギャラリーでは、MIYAGI KOGYOブランドで別注しました。それがAZAMIです。
MIYAGI KOGYO AZAMI 55,000円(税抜)
使用しているラストはM-6000。フォーマル感が安定しています。
このモデルにはAZAMI(薊)という名がついていますが、実はショーン・コネリーが履いていそうなのをイメージして、彼の生まれ故郷であるスコットランドの国花である「薊」をモデルネームとして与えたのです。
ボンド云々はいったん置いておいて、この靴のいいところは、とにかく履きやすい!着脱容易!それでいてキッチリ感がある!ということです。
スーツ・ジャケパンにスリッポンを合わせたいけれど、コインローファー(タッセルローファー)ではどうもピンとこないとお悩みの方、イギリス紳士に憧れる方、とにかくラクチン、それでいてフォーマルな靴が欲しい方…。
AZAMIは皆様大歓迎でございます。
そして、ワールドフットウェアギャラリー銀座店にお立ち寄りの際は、ロケ地巡りもされてみてはいかがでしょうか?