フウガシン/クォリティの高さゆえに「バリュー感はプライス以上」の定評あり
フウガシン「アーリータイムス(EARLY-TIMES) FJ21101」
このブランドでは異色となる無骨な姿の本品は、ペットネームの「アーリータイムス」が表すとおり、アメリカンファッションが最もドレッシーだった20世紀前半のトラッドシューズを彷彿させる、2021年春夏の新作。トウチップ両端がアッパーの最後部まで延びたデザインのロングウィングチップ(別称アメリカンフルブローグ)で、ボリュームある木型、外羽根やトップホールに施されたパイピング、大きく張り出したコバ、靴を全周するストームウェルト、分厚いダブルレザーソなども伝統を踏襲したディテールだ。グッドイヤー製法。ブラック、ダークブラウン。4万2,900円
年々、技術力を向上させ、ハンドソーンウェルテッド製法もこなす実力派に成長!
ブランド名を漢字で書くと「風雅心」。「日本の伝統的な芸術的感性を表す『風雅』の精神を靴作りに反映させたい」との思いと、「日本のマーケットに学び、日本の靴作りで習得した技術と感性を世界に広めたい」との願いが、このブランド名に込められているのだそうです。
そのフウガシンを展開しているのは、1985年に千葉県松戸市で設立された靴メーカー、ビナセーコーです。このブランドは日本の、ある靴メーカーが倒産した際、ビナセーコーの現・代表取締役会長が現地での生産と雇用を存続させるべく、そのメーカーのベトナム工場を継承。その後、同工場での一貫生産体制が整ったのを機に立ち上げたブランドです。なお、同社については、同じくハウスブランドであるペルフェットのページでも紹介しています。
ペルフェットが松戸の本社工場で生産するジャパンメイドであるのに対し、フウガシンはベトナムメイド。それゆえにその分、割安感があるラインナップとなっています。ちなみに「日本のマーケットに学び、日本の靴作りで習得した技術と感性を……」と上述しましたが、このコンセプトの背景には、ベトナム工場が松戸工場から技術を学び、ペルフェットなどの展開で得たマーケティングも活かしながら成長してきたことがあるのでしょう。
ホールカットとは元来、1枚の革に履き口となる穴をうがって、それを成型することで、アッパーに全く継ぎ目がない靴を指すが、ほとんどの製品では吊り込みの困難さを回避すべく、実はヒールカップに継ぎ目を設けて革のハリなどを調整している。一方、ワールド フットウェア ギャラリー別注の「リアルシームレスホールカット FGSL01」はモデル名どおり、継ぎ目ナシの“真正のホールカット”! すこぶる難度の高い吊り込み技術が駆使されており、既成靴では極めて稀少であるのみならず、フウガシンの実力を証す貴重な存在にもなっている。ハンドソーンウェルテッド製法(九分仕立て)。仏・アノネイ社製カーフ。30万円。
フウガシンは、グッドイヤーウェルト製法とボロネーゼ製法の二枚看板で靴作りを行うブランドでもあります。ともに履き心地の良さを生み出す製法ですが、丈夫であるうえに、履き込んで足に慣らしたいときには前者を、軽快で、かつ足が包み込まれるような履き心地を求めたいときには後者を、というように履き分けを提案しています。
さらにワールド フットウェア ギャラリーの別注では、ハンドソーンウェルテッド製法のハイグレードなモデルも存在。職人による手縫いの工程を要する、この底付け法で作られる靴は、グッドイヤー製法と同様に堅牢であると同時に、履き始めから足にフィットし、反(かえ)りが良いという特性があります。プライスはやや高めとなりますが、履く価値にはそれ以上のものがあります。
「うちの店ではデザインや素材などで差別化を図った独自のモデルを取り揃えています」 by WFG スタッフ
「イタリアの高級タンナーとして有名なイルチア社のカーフなど、第一級の革を使いながら3万円台のエコノミーな靴でスタートしたブランドです。百貨店やセレクトショップ、シューズショップなどさまざまな店が取り扱っていますので、うちの店としてはデザインやディテール、素材などでほかとは異なる個性的なラインナップで展開しています。ハンドソーンウェルテッド製法のハイグレードラインも、うちの別注によるものなんですよ」
イマ、買えるフウガシンの紹介はコチラ! → https://wfg-net.com/collections/fugashin
以上、執筆:雑誌ライター 山田純貴