先日はスキンステッチとシャドウステッチのお話をさせていただきました。
スキンステッチといえばUチップ
そう言えるほど、スキンステッチとUチップの繋がりは密接であると思います。
ワールドフットウェアギャラリーでも特に人気のあるスキンステッチが施された靴といえば、MIYAGI KOGYOのFUJIBANAです。
いわゆるDOVERタイプのスキンステッチUチップの靴です。
2009年にワールドフットウェアギャラリーで自社ネームを冠したオリジナルブランドとしてデビューしたMIYAGI KOGYO。そこから1年後の2010年に初代FUJIBANAは誕生しました。
思い返せば今からたった10年前は、まだまだ日本靴ブランドの勢い、技術力、高級感、価値が革靴愛好家にも完全には届いていなかった時代だと思います。
その国産靴の価値に市場が気付き始めるその夜明け頃にFUJIBANAはデビューしたということになります。
日本人の繊細な感性と技術が、寸分違わぬスキンステッチの靴を作りあげました。同時にそれまで言われていた「日本靴には迫力がない、雰囲気がない」という定説を突っぱねたのです。
革のクオリティの差こそあれど、本家DOVERに比して圧倒的に求めやすい価格であったということで、瞬く間に人気靴の仲間入りとなりました。
DOVERの二番煎じではなく、DOVERとはまた別の価値観が与えられた、確かな価値がある靴でした。
理由はいくつかあります。
日本人の足の傾向を熟知した日本の靴メーカーが、日本人のために靴を作った靴は抜群の履き心地を約束してくれました。グッドイヤーウェルト製法の靴であるにもかかわらず、履き馴染みやすく、重量を感じさせない軽やかな履き心地…。先述したとおり、DOVERに比べると価格もお求めやすかったため、コストパーバリューにも優れていました。
また、メーカーの技術力だけでなく、WFGディレクターの日髙の知識もFUJIBANAの価値創造に大きく寄与しました。
1930年代のドレッシーなアメリカ靴。「時を超えたエレガント」を体現する、という方向性からのアプローチも功を奏しました。
DOVERよりもスマートなドレス寄りのフォルムがカントリーチックな泥臭さを排し、都会的な雰囲気を表現することで、スーツやジャケットスタイルに組み込みやすかったのです。
このことからFUJIBANAは(もちろんMIYAGI KOGYO全体としてでもありますが)各種メンズ雑誌にも取り上げられ人気は2016年頃まで伸び続けていきましたが、 2017年頃からしばらくお休みしていた時期がありました。
しかし、日本人が日本人のために作った革靴の履きやすさに魅了された皆さまから、「なんとかMIYAGI KOGYOを再度ラインナップに戻してほしい」という熱い要望はその間途絶えることがありませんでした。
そのお声に応えるために誕生したのがFUJIBANA Ⅱです。
従来のMIYAGI KOGYOブランドに使われていたラストをアップデートさせたM-6000ラストを使用することで、指あたりの軽減を狙いました。
その上で従来のMIYAGI KOGYOならではのフォルムをキープすることで、タイムレスなエレガントさを確保しています。
また、本格靴に欠かせない良質な革の指定も忘れていません。現在ワールドフットウェアギャラリーで扱っているMIYAGI KOGYOの靴はスムースレザーはアノネイを使用しています。
初代FUJIBANAでもご要望が多かったブラックカラーも最初からラインナップしています。
とにかく皆様にはぜひ一度ご試着だけでもしていただきたいと私は思います。
FUJIBANA Ⅱと命名されたこのスキンステッチUチップは、10年以上にも及ぶ日本靴ブランドシーンの酸いも甘いも知る、ワールドフットウェアギャラリーにとって思い入れ深いモデルになりそうです。