Hiroshi Arai's Laboratory of KutuのOrder FAIRをこの度ワールドフットウェアギャラリーGINZA SIX店で開催いたします。このKutuはその他の靴とは一味違う哲学をもっています。まずは3つのキーワードをご紹介します。
Be Sexy
私たちのつくる靴は色気があって欲しい。なぜなら私たち人間は、足が進化し二足歩行になった希少な種であるという点で、足そのものが非常に神秘的な存在であると考えます。その“足”に纏う“靴”は足を守るための道具という役割とともに生命的に色気のある存在でありたい。そしてそれを履く人にも色気を与えて欲しい。
Be a Monster
その靴はあなたが履いた時に動き出す存在であって欲しい。革靴の素材である動物の革を、時間の経過とともに朽ちることのない“生きている存在”と考えます。漢字で“靴”は革が化けると書きますが、それが生まれ変わり“靴”となり、足入れした瞬間から蘇りユーザーに強い一体感を与えます。それを私たちは“モンスターになる”と呼びます。
Be a Companion
その“靴”はあなたにとって同士であり相棒であり、人生を共にするパートナーのような存在であって欲しい。私たちは皮革の経年変化について、革が成長して魅力を増していくことは革靴の良さのひとつであると考えます。日々のメンテナンスという愛情を注ぐことで“靴”はよりあなたに答えてくれる存在になるでしょう。
これがHiroshi Arai's Laboratory of “Kutu”コレクションの全容です。
HIROSHI ARAIというブランド自体はワールドフットウェアギャラリーを古くから知るお客様はよくご存じなのではないでしょうか。
かつてMIYAGI KOGYOの初代ラスト AR76D、AR73Eを作成したのは、現在HIROSHI ARAIを主宰する荒井弘史氏でした。
宮城興業から独立した荒井弘史氏はデザイナーブランドから持ち込まれたシューズの設計する仕事を手掛ける一方、HIROSHI ARAIという自身のブランドを作りました。オーセンティックなドレスシューズももちろん作成しています。
しかし、荒井氏が本オーダー会を通して提案するのは「シューズ」ではなく、「Kutu」なのです。
哲学的な話になりますが、本オーダー会、HIROSHI ARAI “Kutu”において披露する荒井氏の「Kutu」の世界とはいったいどういったものなのか?その考えの根底をご紹介します。
「Kutu」誕生前夜
荒井氏が主宰するオーセンティックドレスシューズのパターンオーダーを手掛けているHIROSHI ARAI。
「出来る限りお客様の思い描いたものを形にしてお届けする」
選べる革の種類、大幅な変更が可能なデザイン。控えめに言ってもHIROSHI ARAIのパターンオーダーの守備範囲は一般的なパターンオーダーを大きく飛び越えていると思います。
※Art NO.0011S このようにHIROSHI ARAIは至ってオーセンティックなドレスシューズの製作も受け付けています。本オーダー会対象外。ご要望のお客様は神宮前本店にて常時受け付けております。
事実、かつて荒井氏は私たちが行ったインタビューの中で、お客様に対してこのようなメッセージを送っていました。
荒井氏:「私は自分のブランドを打ち出すというよりも、皆様お1人お1人が思い描く靴を作っていきたいと思っています。オーダー会では皆様にぜひデザイナーになって頂ければと思います。アッパーと木型と革を組み合わせれば無数のパターンが生まれます。そして私は頂いたイメージを出来る限り形にさせて頂き、皆様にとって最高の1足をご提供できればと思っています。」
荒井氏は「自由度の高いパターンオーダーを展開すれば、お客様はたくさん要望を出してくれるはずで、自分もその要望に応えられる技術を宮城興業からの経験で身につけてきた」そのように考えていたそうです。このこと自体に第三者であるワールドフットウェアギャラリーから見ても間違いはありません。
荒井氏自身の中では、考えていたことと少し違う反応がお客様から返ってきたのです。
お客様がパターンオーダーで「大きな変更のある要望」として伝えてくるものは、せいぜいキャップを加える、逆にキャップをなくす、メダリオンをつける、つけない…そのようなものでした。ブランドによってはこのような変更を受け付けないメーカーもある中で、荒井氏はこの要望を物足りなく感じていました。
「もっともっと色んな要望をぶつけてほしい。自分にはもっと色んなことが出来るのに…」このように感じていたある日、ふと荒井氏は気が付きます。
日頃、様々なブランドのデザイナーが自分に靴の製造の相談にやってくるが、アパレルのプロたちですらどんな靴を作ろうかと頭を悩ましているのに、一般のお客様が「私のブランドは自由が利きますよ、さあご要望を聞かせてください」といったところで、先に言ったようなせいぜいキャップをつける、つけないくらいのことしか要望が上がってこないのは当然かもしれない。何より人に要望を聞かせてくれ、という前に、自分自身が欲しい靴は何なのだろうか?それがないから説得力もないのではないか…と。
そもそも自分が「欲しいもの」は何なのか?
この考えに向き合うことが「Kutu」が生まれるきっかけとなったのです。
荒井氏が考える履物「Kutu」
イギリスなら…エドワード・グリーン、アメリカなら…オールデン…。例を挙げればたくさん出てきますが、名ブランド・名作と呼ばれるドレスシューズはたくさんあります。荒井氏ももちろんそれらのブランドを知っていますし、プロダクトとして尊敬もしています。しかし、どうもピンとこない。大きな興味も湧かない。
そこで、荒井氏は「ヨーロッパ生まれのシューズではない…。そうだ、自分はKutuが欲しいんだ。シューズの翻訳としての靴ではなく、革が化けると書く日本人の考えるKutuが…」という考えに至りました。
欧米人から「 I want to buy a pair of shoes」ではなく、「 I want to buy a pair of Kutu」と言われるジャンルのものを生み出したい。
このシューズではない、革が化けると書く「靴=Kutu」というものを生み出すにはどうしたらいいのか?
ひとつひとつ整理をして考えるところからまずはスタート。
そもそも自分は日本人。日本人はどういったものを履いてきたのだろうか?
まずたどり着いたのは草鞋でした。
草鞋が足を縛ってホールドするラインは人間の足の骨格に実に忠実であって、理にかなっているという点。それは欧米のシューズと共通する点でもありました。
ですが、草履とシューズの大きな違いは、草履は要点だけを縛ってホールドするのみであって、足をすっぽりと覆ってはいません。ゆえに足はシューズに比して開放的であります。
また荒井氏にとって驚きだったのが草鞋は指が本底から飛び出すという点。日本人は履物を通して地面を踏むのではなく、指先で大地を掴むように歩いていたのです。指先で地面を掴めるように、指先がフリーになっているという点も、荒井氏の「Kutu」作成に大きなインスピレーションをもたらしました。
出っ張っているところは空間を出し、凹んでいるところは凹ませる。草鞋を履くとき、親指と人差し指の間に挟んで固定する鼻緒の部分に当たる部分も、靴において再現するのであれば、その部分をきちんと凹ませれば、鼻緒のように固定され、履き心地が良くなるに違いない。
素材もあくまで革にこだわりました。経年変化を楽しめるもので、ずっと長く魅力を持ち続け、むしろ年数を重ねることでその魅力を増すものは革しかないと考えました。
そうして生まれたのが、Kutuのファーストコレクションでした。
この靴をごらんください。
草履の鼻緒のようなホールド感を再現させるために、革を凹ませようと試みて、ハンマーで叩いたことからこのような凹凸が生まれました。当然機械生産ではこのような凹凸はできません。ハンドメイドで作られます。
荒井氏はこの工程によって、死んだ革に新たな命が吹き込まれ、また生き返る…革が化け、Kutuが生まれるのだと考えます。
Hiroshi Arai's Laboratory of Kutuは全てハンドメイドです。見た目は重厚感あるものもありますが、その履き心地たるや実に軽快であります。
革靴だから硬くて痛い、という既成概念を覆すKutu。
ぜひあなたの人生を彩るものを手にしてはみませんか?
Hiroshi Arai's Laboratory of Kutu 一部のモデルをご紹介
Wanderer Boots ~放浪者の靴~
Wanderer Bootsは、Hiroshi Arai's Laboratory of “Kutu”の1stコレクションの作品。このブーツを履けば、どこでどんな事をしても生きていけそうな頼りがいのあるブーツ。アフリカに多く生息する野生動物クードゥを使用、生きた傷痕が表皮に刻み込まれています。爪先と踵には床面を使用し傷がついても復元可能な仕様、硬化剤を使用することでさらに堅牢性を高めています。足首部分には銀面を使用、傷を纏ったこの靴とともに新しい旅に出てみてはいかがでしょうか。
※床面部分をハンマー仕上げにしたForged Bootsも展開しています。Forgedとは「鍛造する」という意味です。
Chojiro ~長次郎~
Chojiroは短靴と長靴の2種があります。
Chojiroの由来は、明治~大正時代の富山県で活動した伝説の山案内人(宇治長次郎氏)から。
礼儀正しく謙虚な人柄と、持ち前の山に対する経験と勘を生かして測量隊をサポートしたと言われています。歴史的資料を見ると氏は草履を履いていますが、“現代に長次郎氏がいたらこんな靴を履いていたのでは?”という発想から登山靴や草履フィットの機能を取り入れたデザインを考えました。
Personal Boots ~既製靴とオーダーの間~
Personal Bootsは、コレクションでありながら、パターンオーダーが可能なフロントジップブーツ。ジップブーツはサイズ調整がきかないため、これといった一品に出会えていない方もいらっしゃるのではないでしょうか?ピットなめしを施したベジタブルタンニンレザーのショルダー部位を使用し、しなやかで足なじみがよく、足の一部となる履き心地、経年変化をお楽しみ頂けます。オーダー靴屋だからできる思考の履き心地をぜひご体験ください。
荒井弘史氏 来店!
11月27日(金)にHiroshi Arai's Laboratory of Kutuの創始者、荒井弘史氏がワールドフットウェアギャラリー GINZA SIX店に来店します。
荒井ワールドにピンとこられた方、欲しい靴がなかなか見つからない、という方、皆様ウェルカムでございます。
皆様の思い思いをぜひ職人にぶつけてみてください!
荒井弘史氏 来店日時:11月27日(金) 16時~19時
概要:Hiroshi Arai's Laboratory of Kutu Order FAIR
開催店舗:ワールドフットウェアギャラリー GINZA SIX店
開催期間:11月21日(土)~12月6日(日)
価格:105,000円(税抜)~
納期:4か月~
荒井弘史氏 来店日時:11月27日(金) 16時~19時