メダリオンとパーフォレーション。
クラシックな革靴を語るうえで絶対に話題に上がるのが、この穴飾りについてです。
メダリオンとは、つま先のキャップの部分に施される紋様のような穴飾りの集合体のことを指します。
この写真の羊の角をモチーフとした「シープホーン」というのが最もよく見かけるメダリオンでしょうか。
デザインが縦長にならない分だけ、キャップが短い靴にも収まりますので、寸の短いビンテージの靴にもよく使われているイメージがあります。
メダリオンはブランドの顔にもなる部分があります。
例えばHIROSHI ARAIのパターンオーダーでは、宮城県の県花であるミヤギノハギをかたどったメダリオンを独自に使っています。これはかつて荒井弘史氏が宮城興業に在籍していたこととつながっています。PERFETTOでは頭文字の「P」をメダリオンに使ったモデルもありました。
しかし家紋といえるほど各ブランドで使い分けているという印象もそこまでないのですが、それでもこのメダリオンは「顔」となるには十分なインパクトがあります。
パーフォレーションとは、革の切り返しの部分に施される穴飾りのことです。
日本の靴メーカーの方と打ち合わせしていると、「親子穴」と呼ぶ人も結構います。
なぜ、親子穴というのかというと、大きい1つの穴とその隣に小さい2つの穴が連続するからです。大きい穴が「親穴」であり、小さい穴が「子穴」となって、「親子穴」と呼ばれるのです。
この大1、小2のスタイルが最も一般的なパーフォレーションになります。
パーフォレーションがキャップのところだけに施されればパンチドキャップトウになりますし、スロートラインなどにまで施されるようになればクオーターブローグと呼ばれます。
そこにメダリオンがつけばセミブローグ、さらにパーフォレーションが鳥の羽のような形になったものはフルブローグ=ウイングチップというように呼び名が変わっていきます。
今回新作で出しましたMIYAGI KOGYOのYAMAGIKU Ⅱはこのパーフォレーションにこだわっております。
よくよく見ると・・・
小穴が2連仕立てになっております。
小穴が1連になっているものは、既製靴でいうと古いアメリカ製の靴に見られる意匠で、現在ではやや珍しいデザインです。
しかし「一般的な小穴」、つまり2つの小さい穴が親穴抜きで、このYAMAGIKU Ⅱのように飾られることは非常に珍しいデザインです。
サントーニでは見かけたことがありますが、既製靴で探そうと思って見つかるパーフォレーションではなく、ビスポークシューズで非常に稀に見かけるタイプのパーフォレーションです。
クラシカルなMIYAGI KOGYOにほんの少しの変化を加えるだけで、雰囲気が変わります。特にMIYAGI KOGYOのような純粋なトラッドシューズブランドにこのような変化を与えるのは刺激的。そういったわけで今回のYAMAGIKU Ⅱは挑戦したデザインの靴となっております。
YAMAGIKU Ⅱ DARK BROWN 60,500円(税込)
それでも小穴だけの変化なので、うるさくなることもなく、MIYAGI KOGYOらしいトラディショナルな雰囲気もしっかり堅持できたので、好感触なアイテムとなっております。
少し変化球を加えつつも、真面目さをキープできている靴はなかなかありませんので、「安パイだけど変わり種が欲しい」という方には特におススメの一足でございます。