オリエンタル/既製靴でも佇まいはビスポークのよう!独自のコダワリが生んだ上質のメイド・イン奈良
グッドイヤー×マッケイのハイブリッド製法でビスポークライクなシルエットを、また、先裏のディアスキン採用でソフトな足当りを実現した「ベベルドグッドイヤーグレード」シリーズのキャップトウオックスフォード。セミスクエアトウの木型「ビアンコ」がもたらすシャープなシルエットや、左右両端がバックステイまで長く伸びたヴァンプラインなどが小粋で、その佇まいはイタリア靴を彷彿させる。アッパーはカーフ。レザーソール。写真はブラック。ブラウンもあり。各6万500円(税込み)。
他に類するものなき個性と高い品質が評価され、新興ブランドながら、もっかWFGで大人気!
奈良県大和郡山市に本社と工場を構えるオリエンタルシューズの歴史は、第二次大戦のビルマ(現ミャンマー)の戦地で靴を失ったことが引き金になって命を落とした兵士を目の当たりにし、靴の重要性を痛感した松本常雄氏が、帰還後の1947年に靴工房を開いたときに始まりました。現在、経営は3代目社長の正剛氏に引き継がれ、自社工場にてグッドイヤーウェルト、ステッチダウンなどさまざまな製法を駆使し、多様な靴を生産しています。
そのオリエンタルシューズが翌年に創業70年を迎えようとしていた2016年、自社の名を冠して立ち上げたのが初のオリジナルブランド、オリエンタルでした。コンセプトは、靴の原点ともいえる手製靴をあえて「マシンメイドによる既製靴で再現する」ことで、これは今日まで変わることなく、グッドイヤーウェルトをメインの製法にしつつ、エレガントで上質な靴を展開しています。
奈良盆地北部の、奈良市に隣接する大和郡山市にあるオリエンタルシューズ社の工場。オリエンタルの製品は全て、この工場で職人たちが手技を駆使して作り上げたメイド・イン奈良なのだ。
なかでも5万円以上のプライスの「ベベルドグッドイヤーグレード」シリーズでは、前足部がグッドイヤーウェルトで、中&後足部がマッケイというハイブリッドな底付けとすることで、グッドイヤーの足馴染みを持たせつつ、まるでビスポークのような繊細でセクシーなシルエットを実現。また、ウエスト幅が著しく細く絞り込まれた、いわゆるベベルドウエストがフィット感を高め、歩行中の土踏まずの落ち込みを抑制し、かつ靴全体をさらにラグジュアリーな佇まいに見せています。
さらに「ベベルドグッドイヤーグレード」シリーズでは、先裏(トウからボールジョイントを経て、左右の中足部に至るまでの内装の部材)に上質な奈良県産のディアスキン(鹿革)を使用。非常に柔らかく、伸縮性に富み、しかも破れにすこぶる強いディアスキンは靴の理想的なライニング素材といえますが、舶来、国産を問わず、これを使った靴がほぼ存在しないのは、柔らかく、よく伸びる、その特性によって内張りするのが困難なためです。が、オリエンタルシューズでは、卓越した技術をもつ職人たちが工夫と努力を積み重ねたことで、画期的なディアスキンライニングを実現したのです!
伝統に立脚しつつも、そこに独自のコダワリと技術を取り入れて、他に類するものなき靴を展開するオリエンタルは、ワールド フットウェア ギャラリーの店頭デビューからわずか5年でありながらも、その人気は高く、もっかファンが急増中です。なお、コレクションはメンズが主体なのですが、2020年秋には女性に向けてクラシックシューズを提案する「ウーマンズ」もスタートしています。
上記「ベルファースト」と同じ「ベベルドグッドイヤーグレード」シリーズにカテゴライズされる、この「ジャックマン」は6アイレットのバルモラル(内羽根)がアデレード(竪琴)形のクォーターブローグ。木型には、モダンブリティッシュを連想させるラウンドトウの優美なシルエットが特徴の、オリエンタルのベーシックラスト「7965」が採用されている。グッドイヤー×マッケイ製法。アッパーはカーフ。レザーソール。写真はブラック。ブラウンも。各6万500円(税込み)。
「ベルファースト」「ジャックマン」を含む「ベベルドグッドイヤーグレード」シリーズでは、その名のとおり、レザーソールにベベルドウエストを採用。また、ソール外周を甘皮状にめくり、そこに出し縫い(アウトステッチ)を施した後、その甘皮を伏せて縫い糸を隠すヒドゥンチャネル仕様とし、半カラス(黒と他の色に塗り分けたツートン)で仕上げてラグジュアリーな表情にもしている。
「実は、ワールド フットウェア ギャラリーとの協業から生まれたブランドなんです」 by WFG スタッフ
「あるとき、シューカラリストの藤澤宣彰さんから『自社のブランドを立ち上げようとしているメーカーがある』という話を聞き、その会社、すなわちオリエンタルシューズ社に『うちの店と一緒に企画しましょう』と声をかけさせていただき、そこから始まったのがオリエンタルです。このブランド名も、ブランドロゴも、ブランドコンセプトも一緒に検討しました。とはいえ、商品開発では模索の連続でしたね。たとえば、オリエンタルシューズが本社と工場を構える奈良県にはディアスキン専業の老舗タンナーがあって、私たちはそこの革をライニングに使おうと考えました。グッドイヤーだけど、柔らかい履き心地にしたかったので。でも、ディアってすごく伸びるんですが、だからこそ内張りするのがすごく難しくて、職人さんは本当に苦労なさいました。でも、そうした努力があって、オリエンタルの製品は唯一無比の個性をもつ、魅力ある靴に結実しているのです」
イマ、買えるオリエンタルの紹介はコチラ! → https://wfg-net.com/collections/oriental
以上、執筆:雑誌ライター 山田純貴