ミヤギ コウギョウ/卓越した技術力と若い職人たちの情熱が高次元で融合&昇華
ミヤギ コウギョウ「FUJIBANA Ⅱ」
甲に施されたライトアングルスキンステッチの秀麗さは、同社の職人の手縫い技が英国の某名門ブランドに比肩するものであることを証している。アッパーは仏・アノネイ社製カーフで、木型には日本人の足形にかなった「M-6000」を採用。レザーソール。ブラック、ダークブラウンの2色展開。6万4900円
目にできない箇所も手抜きなく作り込む、生真面目ともいえる実直な靴作り
山形県南陽市に本社&工場を構える宮城興業のハウスブランド、ミヤギ コウギョウ(MIYAGI KOGYO)は2009年にワールド フットウェア ギャラリーでブランドデビューしました。これ以前、同社の業務はOEM生産などがほとんどでした。しかし、工場を初訪問したワールド フットウェア ギャラリーが、若いスタッフらが熱心に靴作りの研究に励む姿に感銘を受け、同社への初の発注を決めると同時に「宮城興業の名を冠したブランドで売りたい」と進言。「World Footwear Gallery」ネームで販売することもできたものの、これは「自分たちのブランドでデビューして欲しい」(WFG スタッフ)との思いからの提案でした。
社名からも察せられるとおり、かつて宮城興業は宮城県仙台市にありました。第二次大戦中の1941年に同地で創業し、主に旧陸軍向けの靴を生産していましたが、戦災で工場が焼失したことで現所在地に移転したのです。また、高度成長期の1964年には名門ベイカー&サンズと技術提携を締結し、英国におけるグッドイヤー製法の技術も学び、実力を高めていきました。
同社は、ながらくOEM生産などをとおして、さまざまな注文に応えることのできる技術力を培ってきました。たとえば製法についてもグッドイヤーはもちろん、ノルウィージャン、ステッチダウン、マッケイ、ハンドモカシン、セメンテッドなどをこなすことができ、メンズドレスのみならずレディス、ウォーキングシューズ、ゴルフシューズなど多彩な靴をフレキシブルに生産でき、しかも、その国内屈指の高い技術力には多くの顧客からの厚い信頼が寄せられてきました。
宮城興業の工場にて、製靴作業の様子。
その実力派シューファクトリーが、ワールド フットウェア ギャラリーに背を押されるようにして立ち上げたミヤギ コウギョウは、グッドイヤーシューズのレディメイドブランド。その製品は、正確なピッチで施された出し縫い、優美な曲線を見せる内踏まず、踵(かかと)を包むように支えるヒールカップなどに加え、ハンマリングを駆使する吊り込みで革を木型にしっかり馴染ませ、二重シャンクを仕込んで歩行時も安定性を高めるなど、目に見える箇所も見えない部分も実に丁寧に作り込まれており、そこから同社の靴づくりに対する実直で誠実な姿勢をうかがうことができます。
ミヤギ コウギョウの評判は、靴通の間ですぐさま話題となり、ワールド フットウェア ギャラリーでは初年度に約1000足も売れました。そして、その実力は年々高まっており、国内のみならず、ノルウェーの首都オスロの某名店でも取り扱われるなど国際的な評価も広がっています。
「就業後も自主的に靴作りの研究に励む若い職人たちの情熱的姿勢は感動的でした」 by WFG スタッフ
「あるとき、国産靴の展示会で、会場の入口に掲げられている出展各社の一覧を見て驚いたんです。そこには『100足~』とか『300足~』と各社の受注ロットが記されているのですが、その中に『1足~』という会社があった。『何だ、これは?』って思って、その宮城興業なる会社に連絡をとり、本社&工場を訪ねました。1足からというのは『顧客への奉仕』という考え方によるものだそうです。で、工場では、就業時間が過ぎても6、7人の若者たちが靴を作っている。聞けば、彼らは英国やイタリアで靴作りを学んだ経験があり、機械を使わせてもらいながら試作したり、腕を磨いたりしていたんですね。その意気込みに感銘して、その場で同社にオーダーしました。もちろん1足ではなく(笑)」
イマ、買えるミヤギ コウギョウの紹介はコチラ! → https://wfg-net.com/collections/miyagi-kogyo
以上、執筆:雑誌ライター 山田純貴