ドゥ ジエール/オパンケシューズの元祖メーカーが作る粋でいなせなお洒落靴
トウから甲に至るアウトサイドに流線の切り替えがあり、そこに手縫いによる太番手&粗ピッチのホワイトステッチがインサイドのレースステイ→トップホール→アウトサイドのレースステイへと延伸。しかも、そのレースステイの裏に縫い付けられたループにシューレースを通す構造ゆえにスリッポンのように見えるという、実に凝った作りがなされている。これにより、クラシカルで味わいがありながら、洗練さと色気も備えた独創的1足に仕上がった。製法はもちろんオパンケで、本底はハーフラバー仕様。ブラック(写真)、ライトブラウン、ダークブラウンの全3色。75,900円。
スマートな木型とオパンケ製法がもたらす、美しい佇まい&軽やかな履き心地
2001年、ワールド フットウェア ギャラリーで日本デビューを飾ったフランスの新ブランド、ウーゴ&エンツォ(HUGO & ENZO)は、たちまち人気ブランドの仲間入りを果たしました。そのコレクションには当時、日本ではほとんど知られていなかったオパンケ製法の靴、すなわちオパンケシューズがあり、そのユニークなスタイルが話題となって大人気を博したのです。
オパンケ(オパンカ)製法とは、ソールのヘリを巻き上げて、アッパーの上にかぶせて縫い付ける底付け法のこと。つま先、あるいは踵(かかと)などでラバーソールが競り上がった靴はランニングシューズなどに見受けられましたが、ウーゴの登場以前、日本でこの製法のレザーソールシューズを目にすることはありませんでした。しかも、ウーゴのオパンケでは土踏まずのフィット感を高める目的から、ウエスト部分がオパンケになっており、それによってもたらされるデザインは非常に個性的で印象的なものでした。そしてこののち、スペインのマグナーニなど他のメーカーもこの製法を取り入れるようになり、オパンケシューズは広く普及していったのです。
残念なことに、デビューから3年ほどでウーゴ&エンツォは消滅するのですが、実はその製品を生産していたのはポルトガルの某ファクトリーでした。そしてドゥ ジエールは、1935年創業の同ファクトリーが、ウーゴの生産で培った技術を駆使して展開するオパンケシューズのブランドなのです。※ブランドの登録はフランス。
これが2ピースシューズ「GIW6208。」のオパンケソール。ブランドのネーム&徽章(きしょう)がスタンピングされたウエスト部分の革がインサイド、アウトサイドともにアッパーにかぶさるように競り上がっており、その切り替え部分に沿って、手縫いで堅牢なステッチが施されている。ちなみに底前はハーフラバー仕様。ヒールリフトの形状もユニークだ。
ドゥ ジエールの靴はやや捨て寸長めのセミロングノーズで、これにウエスト部分で競り上がったオパンケの切り替えラインが相まって、非常に軽やかでスマートな印象です。しかもソールが比較的薄めとあって、見た目のみならず履き心地も軽快。短靴タイプは、とりわけ春夏の足元にふさわしいものに仕上がっています。
また、ドゥ ジエールは彩色の技術も巧みで、アッパーや革底に手仕事で施されたアンティーク調の色合いとムラ感は誠に秀逸。これもあって、華やかさの中にヴィンテージな雰囲気があり、それがオパンケとともに、このブランドの個性にもなっているのです。
ワールド フットウェア ギャラリーでは2005年のブランド誕生と同時に取り扱いが始まり、以来、今日まで人気は衰えることなく、ことに足元のお洒落にこだわる人々から根強い支持を受けています。なお、日本でドゥ ジエールの製品が購入できる実店舗はワールド フットウェア ギャラリーのみ。この意味から、その存在自体が貴重ともいえるのです。
左がブランド頭首のファッティマ
クラシカルに練りコルクを使う工場
「オパンケシューズの存在を世に知らしめ、普及させたことは特筆すべきことでしょう」 by WFG スタッフ
「ウーゴ&エンツォの生産を担当していたファクトリーが、同ブランドの消滅後、そのオパンケ製法の技術をもとに立ち上げたブランドです。ウーゴの時代も含め、それまで日本に馴染みがなかったオパンケシューズをここまで普及させてきたわけですから、高級靴のマーケットにおいて、同ファクトリーの貢献度は高いと思います。ちなみに、うちの店では2005年の導入以来、ずっと大好評のブランドなんですよ」
イマ、買えるドゥ・ジエールの紹介はコチラ! → https://wfg-net.com/collections/de-gier
以上、執筆:雑誌ライター 山田純貴