アルミニ/他に類を見ない独創的製法が極上の履き心地の繊細優美な靴を生む
手染めによるワインカラーの繊細な諧調が美しい上質スエードを使用。タッセルを取り囲むように施されたライトアングルタイプのスキンステッチにも気高さを感じる。製法は「アルミニメソッド」によっており、中底とコルクを仕込みつつ、リバース後に本底が付けられている。そのレザーソールはトップキューゾ(限界までコバが削り込まれた仕様のこと)の丸コバで、これもまた、この靴をいっそう優美なものに見せている。19万8000円(税込み)。
大富豪を顧客にするファクトリーゆえに入手が可能なプレミアムフレンチカーフのみを使用
イタリア北西部にあるヴィジェノバは、同国における製靴業の中心都市として知られています。アルミニ社は1921年に、この街で創業。以後、子供靴やサッカシューズなどを生産していました(現在では、これらは手がけていない)が、’80年代以降、アラブ首長国連邦やカタールなどのオイルリッチを顧客とする超高級サンダルを生産するようになり、今にいたっています。
そのアルミニ社が本店オープンとともに2016年に立ち上げたのが、自社の名を冠したドレスシューズブランド、アルミニです。ちなみに、このブランドは同社とワールド フットウェア ギャラリーの協業によって誕生しており、それもあって、そのミラノの本店に続く世界で2番目の売場として「ワールド フットウェア ギャラリーGINZA SIX」が選ばれ、’17年春に日本初上陸を果たしました。
アルミニのミラノ本店。ラグジュアリーな空間に美しい靴や革製品が並ぶ。
アルミニの製品には、アッパーにアース(HAAS)社のカーフが使用されています。フランス中東部アルザス地方にある、シャネル傘下の同タンナーのカーフは高級メゾンなどごく限られたブランドにのみ使用が許される超高級皮革で、希少で高価ゆえに日本のメーカーではなかなか入手できないものとされています。しかし、アルミニ社は大富豪向けの超高級サンダルを作ってきた実績から、オリジナルのドレスシューズにもこれを使うことができるのです。ちなみにスエードのモデルにおいてもアース社のカーフを、銀面(スムース面)を残した状態で裏返して使用しています。
長年にわたって超高級サンダルの製作で育んだ超絶技法をドレス靴作りに応用
実は、アルミニの靴は全く独創的な製法で作られています。「アルミニメソッド」と称されるその製法は、同社が超高級サンダルの製作で蓄積したノウハウの応用であり、アッパーを木型に吊り込み、その革の内側と、底材(中底、ないし中底兼本底)の切り目(裁断面)が直に接した状態で縫合した後、木型を抜き取ってアッパー&底材をリバース(裏返し)するというものです。このリバースの工程はバレエシューズにも見られるものではあるのですが、それらに比してアルミニの靴の履き口はずっと小さいのです。それを裏返すなどとはちょっと信じがたい話ですが、同社は革を水に濡らして柔らかく、よく伸びる状態にしてこれを行っています。しかも具体的なことは企業秘密ですが、このリバースによって革が変形したり、シワが残ったりするようなことはないというのです。
「アルミニメソッド」によって出来上がる靴は足に吸い付くようにフィットし、しなやかで返りが良く、また、ソールには張り出しがなく、グッドイヤー靴のようなコバの出し縫いもありません。しかも上述したように、底材の切り目に針を入れて底付けするという超高級サンダル由来の特殊技術により、外側にも靴中にも縫い目は見えず、よってマッケイ靴のようにそれが足裏に触れることもありません。
今回、ここに紹介している2モデルもアース社製カーフ&「アルミニメソッド」採用であるのはもちろんですが、さらに注目したいのが甲に施された、大変にみごとなスキンステッチでしょう。スキンステッチとは手縫いの一種で、湾曲した縫い針を使って革を貫通させることなく、すくうようにして縫う技術を指します。そして、この作業は吊り込む前に施すのが一般的なのですが、アルミニ社はこのステッチの位置がほんのわずかでもズレるのを嫌い、木型に吊り込んだ状態で縫っていて、ゆえにその分、さらに高度で熟練した技術を要しているのです。
このようにアルミニの靴は、他社の製品にはない、あるいはほとんど見ることのできない独自性が備わっており、それが靴好きの興味を喚起しています。しかも、それら製品の生産量は多くなく、フランス本国でも日本でも存在自体がレアであり、そこもまた、靴通を魅了しているわけなのです。
「トリプルインフィニティローファー AMW0044」は、アルミニがブランドアイコンとしてさまざまなモデルのデザインに取り入れているトリプルインフィニティ(「3つ無限」の意)をスキンステッチで表現したことで、どこか中世絵画を思わせる佇まいに。製法はアルミニメソッドで、吊り込んだ状態で中底を兼ねる薄い革の本底を縫い付けた後、木型を抜き取ってリバースしたものだ。写真上のグレーのほか、ブルーもあり。19万8000円(税込み)。
「ブランドコンセプトやプロダクトはアルミニ社とうちの店の協業で作り上げられたものです」 by WFG スタッフ
「もともとアルミニ社の人たちとは靴の展示会MICAMで顔見知りでしたが、取引はありませんでした。なにしろ1足で何百万円、何千万円もする超高級サンダルなんて、うちの店で取り扱える商品ではないですからね。そんな同社がドレス靴のオリジナルブランドを始めようということで、社長の娘さんが自分の配偶者にそのことを話したんです、『アジアなら、どの国でスタートすべきか?』と。で、某靴大手メーカーの中国法人の社長だった彼は日本がいいと考え、同メーカー日本法人の社員に相談したところ、うちの店を推されたのだそうです。そこでアルミニ社の人たちがうちにやって来たんです、「こんな感じの靴で展開したい」と某メゾンのサンプルシューズを持参して。実は、同社はサンダル以外に、そのメゾンの一部の製品を受託生産していたんですね。そして、そこから『一緒にブランドを作り上げていこう』という話になりました。その後、私たちもアルミニ社を訪問したんですけど、全然準備がされてなくて、あったのは例のメゾンのサンプルだけ(笑)。と、そんな感じで約2年間、半年に1回のペースで直接会って企画を進めていき、それで2016年1月にミラノで本店がオープンしてブランドデビューを果たすことができたというわけです」
イマ、買えるアルミニの紹介はコチラ! → https://wfg-net.com/search?type=product%2Carticle%2Cpage&q=ALMINI
以上、執筆:雑誌ライター 山田純貴