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G.T.ホーキンス/乗馬、ドレス、ミリタリー、クライミング……と多彩な英国靴をこなした実力派

写真上は、かつてワールド フットウェア ギャラリーが使用していたホーキンスのカタログ(1987年刊)を抜粋したもの。左下に赤文字で「Approved Contractors to H.M. Government(女王陛下公認の御用達業者 ※H.M.=Her Majesty=女王陛下)」の記載が見てとれる。写真の人物は英国陸軍近衛騎兵連隊、すなわちライフガーズ(The Life Guards)の騎兵。彼らは王室などの衛兵任務のほか、戴冠式などのパレードで騎兵なども担当している。また、その際のユニフォームは19世紀後半のパクス・ブリタニカ(ヴィクトリア朝)後期の騎兵スタイルをベースに、17世紀後半の王政復古期の装飾を加えたもので、これは現在も変わらないのだが、1987年当時に採用されていたオーバー・ザ・ニー(膝上丈)のライディグブーツはG.T.ホーキンス社製であったことが、ここからわかる。

 

実は、かつては英国王室御用達を賜るノーサンプトンの名門シューメーカーでした

1850年、イングランド中部に位置し、製靴の街として知られるノーサンプトンにてジョージ・トーマス・ホーキンス氏が自身の工房を開いたとき、G.T.ホーキンスの歴史が始まりました。その後、グッドイヤーウェルト製法の発明などによって靴製造の工業化が進むに連れ、ホーキンス氏も事業を拡大していきました。1885年、同地に「ウォーカーズ ブーツ ファクトリー(WAUKERZ BOOT FACTRY)」の社名を掲げた社屋兼工場を建設。その建物はノーサンプトンの中心街から北北東に位置する赤レンガ造りが並ぶ工場街の、オーヴァーストーン通りがセントマイケルズ通りと交わる場所に現存しています。

 

1995年、この社屋兼工場は閉鎖となり、以来、廃墟状態になっているのですが、近年、これをノーサンプトンの歴史的建造物として再生・保存しようという動きがあるようです。ちなみに、その建物外壁のコーナーエントランスにはいまなお、ロイヤルワラントが掲げられており、そこには「女王陛下の乗馬靴製造者に任命された」と記載されています。じつは同社屋が竣工したその年、ウォーカーズ ブーツ ファクトリー社はヴィクトリア女王にライディングブーツ(乗馬ブーツ)を献上したことでロイヤルワラント(王室御用達)を賜っているのです。

 

1899年以降、同社は主力商品のライディングブーツに加え、ミリタリーブーツ(軍用ブーツ)の量産にも取り組んでいきます。まず、この年に勃発した第二次ボーア戦争(~1902年。英国とオランダ系アフリカ人=ボーア人が南アフリカの植民地化を競った戦争。英国が勝利する)で自国軍にブーツを供給。第一次世界大戦(1914~1918年)と第二次世界大戦(1939~1945年)ではアヴィエーションブーツ(空軍パイロット用ブーツ)などを、朝鮮戦争(1950~1953年)では寒冷地用ブーツなどを自国軍や国連軍に納め、フォークランド紛争(1982年、大西洋英国領フォークランド諸島の領有をめぐる英国とアルゼンチンの紛争。英国が勝利する)でも英国軍にブーツを支給しています。そして、これらミリタリーブーツの生産はウォーカーズ ブーツ ファクトリー社を大いに発展させたのでした。なお、同社は1916年に社名をG.T.HAWKINS.LTDに変更しています。

 

1980年代~'90年代前半、日本ではG.T.ホーキンスはトレッキング&クライミングブーツやワークブーツ、ウォーキングシューズ、ビジネスシューズなどのブランドとして知られるようになりました。ことに1953年、エベレスト初登頂の偉業を成したニュージーランド・アルペンクラブ・ヒマラヤ探険隊にクライミングブーツを提供したことは、この分野における同ブランドの実力を世に知らしめることに一役買ったはずです。が、'90年代に入って同社の経営状況が悪化。結果、ブランドの商標権が某大手靴チェーンにわたり、メイド・インUKとしてのG.T.ホーキンスの歴史は終焉を迎えたのでした。

 

 

「クリスマス限定品を企画・販売したことが、日本にこのブランドの名を広げるきっかけになりました」 by WFG スタッフ

1982年からG.H.バスの輸入・卸に取り組んでいた私どもは、それに続き、英国からG.T.ホーキンスも輸入することにしました。それらは当時、成長しつつあったセレクトショップなどで販売され、大変な評判になりました。また、1987年のクリスマスシーズンにサンタクロースバージョンとして、ロットナンバー付き500足限定でスチールトウのストレートチップダービーを販売したことで、このブランドの名がさらに知られるようになったんです。米国の文化にコングラチュレーションレターというのがあって、そこから発想し、各商品にリトグラフによるレターを入れて29800円で販売したんですが、雑誌『ポパイ』が記事にくれたこともあり、わずか1週間で完売したんですよ! 恋人へのクリスマスプレゼントとして、多くの女性が購入してくださったと聞きましたね。ところが、後に某シューズショップに販売権が移ってしまったことで、やむなく取り扱いから手を引くことになったのです」

これが、かつて数量限定ストレートチップダービーに同梱されたコングラチュレーションレター。当時のG.T.ホーキンス社輸出担当部長のサインとともに「拝啓 お客様 1987年のクリスマスを記念し、精巧なカスタムを施したホーキンスシューズを500足限定でお届けします。これは、今までにいただいてきた温かいご愛顧に対する感謝の意を表すものです。このクリスマスモデルがあなたの永遠のお気に入りの1足であり続けることを願い、また、ホーキンスシューズの高い品質に対する継続的なご支持を賜るべく、私どもは多くの義務を負っていきます」とのメッセージが記載されている。


以上、執筆:雑誌ライター 山田純貴

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