内羽根プレーントウと革靴離れ

内羽根プレーントウの靴をいざ探してみると、これがなかなか難しい。

 

Oriental GRANT 39,000円(税抜)

 

内羽根プレーントウの靴は内羽根ストレートチップの靴と同等以上にドレッシーな靴であると考えられます。

 

特にエナメルで仕立てられている場合は、夜の最礼装、準礼装に合わせて用います。最礼装はホワイトタイで燕尾服、準礼装はブラックタイで男なら着てみたいぞタキシードというわけです。

エナメルの靴は夜間照明できらりと光りますから、ドレッシーに見えますよね。

その昔、靴のクリームが今ほど品質が良くなかった時代は、靴墨で磨いた後の靴を履いて夜の舞踏会で女性と踊ると、女性のドレスを汚してしまうという致命的な欠点があったために、靴墨を使う必要のないエナメルの靴が特に夜の礼装に好まれ、習慣化、ルール化されたようです。

 

時代は下って2020年。現在ではエナメルの靴までいかなくとも、靴クリームの性能が向上した甲斐もあって、通常のカーフの内羽根プレーントウであれば、十分礼装に合わせていただくことが可能です。ノーベル賞授賞式のような余程厳格なドレスコードが設定されている場でない限りは。

 

このように徐々に徐々に服装に対する認識というのは時代とともに変化していきます。

本来エナメルが最も正統である内羽根プレーントウの靴が、通常のカーフで売り出されるようになっているのも、その変化の一端であると言えるでしょう。

 

そして、服装の変化のひとつである「革靴離れ」という言葉も聞いて久しいですが、筆者個人としてはやはり革靴は無くならないと思います。

 

人間はやはり楽なもの、楽なものへと流れるようにできています。

モノが不足していた昔は、着飾れるだけ着飾ることこそ、富・勝者の象徴で、礼装の最高峰だったのです。

ですが、やはりそういったものは装着も維持も一苦労、時代が下るにつれて、より簡略化、楽なものへと流れていった結果、昔は部屋着に過ぎなかったスーツが今では準礼装に近いものになっています。

 

機能性スーツ+Tシャツ+スニーカーというスタイルも昨今特に打ち出されているスタイルですが、私個人としては、着崩す→ルール化されるとしたら、恐らくここまでが限界なのではないかと思います。

人間これ以上楽を求めて着飾らなくなってしまったら、裸になってしまいますからね。

 

ゆえに社会生活を営む上での礼装とは切り離せない革靴も、完全に「革靴離れ」になることはなく、一定の地位を保ったまま社会に残っていくことでしょう。

 

さて、筆者が当記事を通じて最後に言いたいことはひとつ。

「いったん楽を覚えてだらしない恰好を覚えてしまうと、ドレスの根本たるスーツスタイルを着こなせなくなる」ということです。

不思議なもので、いくら高いお金を出して上物を揃えても、その人の中で「習慣化」されないと、それを身に着けたところで全くカッコよく見えないものなのです。

 

スーツを基軸とする「トラッドスタイル」はファッションの域を超えた習慣的なところから発生するためです。

 

ドレススタイルと向き合う=面倒くさいもの、という認識を一度捨ててみてください。

革靴を通してメンズドレスファッションの奥深い世界へとお客様をスタッフがいざないます。